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     大磯宿雑之部
一、此宿榜示杭弐ヶ所有之、壱ヶ所ハ東入口有之、壱ヶ
 所ハ西小磯村堺有之、何れも建替之節ハ領主ゟ差図
 を請宿方入用にて取扱、
一、此宿田ゟ畑多し、用水ハ無之天水を用ゆ、
一、呑水ハ堀井を用ゆ、
一、農業之外旅籠屋ハ旅人の休泊を請、又ハ食物を商ふ
 茶店有之、其外諸商人多し、
一、五穀之外時々の野菜を作る、
一、此宿男ハ往還日雇稼をいたし、女ハ糸をとり機を織
 る、其外仕馴たる手作業なし、
一、此宿市立之儀は毎年十二月十四日字茶屋町において
 正月餅之品売買致す、
一、米の津出し相州浦賀に海上拾七里程、江戸まて海上
 三拾六里程有之、
一、此宿海辺にて取扱候船数四拾艘之内、廻船壱艘・押
 送り船六艘・漁船大小三拾三艘なり、尤増減有之候由、
一、此宿海手にて鯛・甘鯛・鯥・鯵・鯖・鰹・□・小鰹
 ・鮑・鰤・鮃其外小魚を取、江戸に売出し候由、
一、此宿往還に化粧坂という所并宿内延台寺境内に虎子
 石というふ石あり、字浜ヶ獄御林際に当時虎ヶ池新田
 と唱候所有之、何れも旧跡之由、
一、宿内裏通り猟師家居百九拾六軒有之、
一、此宿往還ゟ六間程引込鴫立庵と名付候、俳諧の庵宝
 ニ西行自筆の色紙壱枚有之、其外堂上方短冊等有之、
 候由、
一、右庵中文覚上人鉈作りの西行法師の像といへるあり、
 古き像なり、大磯の虎か像も有之、
一、此宿海辺より出る小石を五色砂利という、此所の名
 産にて御用之節ハ、御入用等被下上納致来、右砂利往
 来の旅人に商不申、尤諸家休泊之砌望有之候由、差出
 候節にて代料請取候由、
一、此宿浦高札場壱ヶ所高札三枚有之候由、
一、宿内一躰平地にて少々小坂有之、見渡し山々有之、
 且此宿より隣村又ハ田畑耕地に出る小道之外、重立候
 脇道なし、
 


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